愛の旋律
クリスティーのミステリ物はほとんど読んできた。メアリ・ウェストマコット名義で書かれた『春にして君を離れ』『愛の旋律』などの、作品群はポアロやミス・マープル物とは違う印象がある。ひとくちで言えば、作者は主人公に容赦しない。救いがないと思うことがある。人間不信にさえおちいる。
クリスティの経歴を読むと、最初の夫と離婚の後、14歳年下の考古学者マックス・マローワンと出会い、嵐のようなロマンスで再婚したとある。しかし1976年、彼女が亡くなってすぐにマックスは秘書と結婚と知ると、えっそんなに早くと思った。秘書は名目でマックスの長年の愛人だったらしい。
クリスティの処女作『スタイルズ荘の怪事件』をはじめとして、幾つかの作品のシチュエーション(金持ちの老婦人と年下の夫とその愛人)を連想する。ほんとうはこういうことは、知らないほうが良かったのかもしれない。
でも、その事実を踏まえて読むと、彼女の作品はいっそう怖くなってくる。
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