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代役




「あら、もうこんな時間? ご主人、帰りが
早いんじゃないの」
 芳子は何杯かお代わりしたコーヒーカップ
を置きながら、聞いた。彼女とわたしは、映
画を見たあと、遅い昼食をとっていた。
「わたしは独り暮らしだから、構わないけど」
「いいのよ。今日は代役がいるから」
「娘さん、来てるの?」
「うちの主人って帰ってきても、わたしの顔、
ろくすっぽ見ないのよ」
「うちもそうだったわ。髪型が変わったって、
気がつかなかったし」
「ご飯食べてるときだって、テレビから目を
離さないし、九時には寝ちゃうのよ」
「贅沢な不満ねえ」
 芳子は笑う。
「それでね、妻の代役というサービス、申し
込んだのよ。わたしに似たひとが来てくれる
んだって」
「ばれるに決まってるじゃない」
「食事の支度さえしてもらえれば、文句無し
のひとよ」
「そうねえ、でも」 
 芳子はくちごもりながら言う。
「ご主人も、もしかしたら、頼んでるかも」
「へんなこと言わないでよ」 
 声が高くなった。
「あなただって、ご主人の顔、あまり見てな
いでしょ。彼だってたまには息抜きしたいと思うわ」
「まさか、そんな」
「じゃあ、早く帰って確かめたら。わたし、
これから約束したところへ行くの」
 芳子は伝票を手に、レジに向った。クリー
ム色のスカートから、ほっそりとした脚が伸
びている。

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