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防災訓練




「忘れものないな?」
 和男は娘の由美に聞いた。
「疲れたら、電話しなさい。迎えに行くから」
「大丈夫、それより、お母さんお願いね」
 徒歩で帰宅訓練の由美を見送って、
「おれたちも、そろそろ支度するか」 
 和男は妻の登志子に言った。
 今日は全国一斉の防災訓練の日だ。テレビ
で首相が、落ち着いて行動してください、と
呼びかけていた。和男と登志子はリュックを
背負って、指示された場所へ向かった。お向
かいの山田さんも一緒だ。
「山田さんはおひとりで?」
和男が尋ねる。
「家内は、昨日から腰を痛めましてね」
「それは、大変ですね。足に巻いているのは
ゲートルですか」
「故郷の家を整理したとき、見つけました。
僕は十四で終戦でしたから」
「ずいぶん、大掛かりね。あれ、自衛隊じゃ
ないの」
 和男が登志子の指さす方を見ると、装甲車
から、迷彩服の男がつぎつぎ降りてくる。
「本当に、防災訓練かしら。由美に電話して」
「繋がらないよ。ラジオも雑音ばかりだ」
「立ち止まらないで、早く歩け」
 武装した男が命令した。
「家内を連れてこなきゃ」
 山田さんは引き返そうとしたが、羽交い絞
めにされた。
「あなた、B29よ」
 登志子の叫び声が遠くなった。
「空襲警報発令!」
 サイレンが響く。幼い和男は、母親に手を
引かれて駆け出した。人の死体を踏んだが、
かまわず走った。

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ババの短説」カテゴリの記事

コメント

 原型は読んでいませんが、最後、やはりこれでいいと思います。合同座会で、過去にしないで、現在のほうが良いという意見があったそうですが、現在のこととすると、ちょっと無理が生じそう。
 過去と現在の境界線があいまいなのもいいと思います。自衛隊が出てくるあたりから、なんだか怪しくなってくるのですが、この時点ではまだ半分現在で、「登志子の叫び声が遠くなった」というところから、突如過去に突入する。それが「声が遠くなった」という形で表現されているのが絶妙で、たいへん良いです。

西山正義様
拙作「防災訓練」について、ご批評いただきありがとうございます。座会では評価が低く、駄目なのかなと思っておりましたが。出来の悪い子ほど可愛いというような気持ちでアップしてみました。
西山さんの作品「鉄」について、失礼なコメントをしたこと、反省しています。溶鉱炉を見学した時の、真っ赤な火の色を今も鮮やかに覚えています。

 拙作「鉄」のラストは、艶笑小話的な要素も意図的に加味しているので、そのように読んでいただけたということは、作者としては成功だと思っていますし、実はある程度は狙い通りなのです。
 たとえば、通信座会のある人の評のように「ユーモアに欠けるかな」というのとは逆で、そこに性的なニュアンスを読み取っていただけているわけですから、全然失礼ということはありません。むしろ、作者の意図に近い読みといえます。あまり真面目一方にとられてしまっても面白みがありませんからね。

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