お題べつ好きな歌
066:消
(武田ますみ)
消音のテレビ画面を見るようだホテルの窓から眺める街並
(廣西昌也)
一子って声だしたのちサイレンス消えたものほど存在となる
( あみー )
送信の履歴は消した 淋しさの正しい伝え方が知りたい
(前野真左子)
留守電に間違いひとつ 呼びかける声優しくて消しかねている
(やまもとなおこ)
母上の手から雷撃ほとばしり煙をあげて消えうせる父
067:スーツ
(船坂圭之介)
風めぐるなかの孤独に耐えてわがスーツもっとも醜きかたち
( さよこ)
きっちりとボデイ-ス-ツに畳たりチ-ズケ-キの納まる胃の腑も
(我妻俊樹)
(運転を見合わせています)散らかったスーツの中に人がいるのだ
(五十嵐きよみ)
おそろいのスーツケースを並べても別々のもの詰めて旅立つ
(西村玲美)
指先でスーツの皺をなぞるとき乾きかけたるオアシス思ふ
068:四
(天藤結香里)
銀河にも前後左右はあるようで四つ葉のクローバーのような星雲
(仁村瑞紀)
鍵善のくずきりがよい 祇園へと四条大橋渡ってゆこう
(井上佳香 )
山百合を四五本包み新聞紙あなふくぶくと抱えられおり
(村上きわみ)
液晶の林の奥でツーチーと今朝は四十雀が啼いている
(倭 をぐな)
四海波おだやかにして粛々と潜水艦が核運び行く
069:花束
( 謎彦)
にんげんの痕跡として電柱の根元にしばられたる花束
(落合葉 )
ごめんねのかわりに贈る花束はうすい香りでひかえめな色
(唐津いづみ)
誇らしく抱かれるため花束は息とめきつくリボンをしめる
(佐藤紀子)
花束を貰ひて帰ることもなく退職の日が静かに終る
(小池尹子 )
去年の秋五十嵐さんより貰ひたる花束メモ帳に今も戦げり
070:曲
(浜田道子)
ウインドに映るは背(せな)の曲がりたる我かと思うやはり我なり
(林義子)
丘に上り見放く平野に千曲川黒き影伸し蛇行しゆけり
( minto )
婉曲がよしと思へば人は皆頭を低くして紫陽花になり
( きじとら猫)
平穏が紆余曲折の結果なら二度とは着ない花嫁衣裳
(村上きわみ)
褶曲のはてのゆがみもうつくしき誤読となして歩いてゆかな
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