お題べつ好きな歌
061:じゃがいも
(今泉洋子)
産土(うぶすな)にじゃがいもの花咲き初めて母のいまさぬ母の日近し
(有田里絵)
じゃがいもをただ茹でている夕まぐれほろり崩れるカタチ見守る
(丸井真希)
面倒な凸凹加減だじゃがいもやニキビの痕を残した君も
(八香田 慧(ようかだ けい))
安全を地味に重ねる退屈さじゃがいもの芽をえぐり出すよう
(高澤志帆)
7月、健康的
包丁で毒の芽ゑぐりしじやがいものやうに家族の美(は)しき穴ぼこ
062:風邪
(斉藤真伸)
第一次大戦のころの年表に「スペイン風邪」の禍々しき文字
(大西蒼歩)
風邪ひかぬ免疫力欲し取りあへず昼食代の四百円欲し
(寺川育世 )
「春の風邪心うましむあきらかに」豊玉発句集には載らず
(仁村瑞紀)
部屋によぶ口実だろうその風邪は 桃缶ひとつコンビニで買う
(折口 弘)
源(みなもと)は君の風邪だといいのにな 二日遅れの咳をしてみる
063:鬼
(花詠み人)
わが父も 鬼になったか 中国で 元兵隊が 殺りく語る
(林本ひろみ)
鬼菅(おにすげ)のツンツン尖った棘の先柔らかすぎる心を隠す
(高崎れい子)
球体を腹の奥より光らせて鬼灯の実の橙は透く
(ぴいちゃん)
軒端より巣立つ子すずめ見送りて鬼の瓦は少し微笑む
(櫂未知子)
点鬼簿の三ページ目に棲むといふ昔愛した人の箸箱
064:科学
(斉藤真伸)
ビニールのヒモに括られ店先に「科学朝日」は黄ばみつづける
(はぼき)
人体の神秘をちょっと科学するわたしの内で起きてることを
(三宅やよい)
「学研の科学」組み立てている少年の耳の後ろに夕闇せまる
(篠田 美也)
絶望がlalala科学の子を生みしゆゑに儚き飛雄といふ名
(水島修 )
欅わたる夏の風なり科学部の部室のドアを叩いてゆけり
065:城
(春日山)
城跡の公園内の一画に象の飼はれて日々孤独なる
(寺川育世)
鬱金の甲虫書架を這ひゆきてつひに『幻影城』に触れたり
(今岡悦子)
それぞれに居場所がありてわが城は夜ともなれば戸を閉て静まる
(唐津いづみ)
いましがた二の腕つまむそのぬくみ結城紬の母に似ていた
(佐藤りえ)
城趾にて雀のような隊列の女子高生をやり過ごし
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