お題べつ好きな歌
056:松
( 行方祐美 )
松陰嚢(まつぼっくり)からから拾う昼ひなか空に吸わるることなどあらず
( さゆら)
遠巻きにすつとばす道磐代の浜松が枝も皇子の恨も
(遥悠(天晴娘々) )
わたしでありわたしではない松果体 生体時計といふ冷酷に
(今岡悦子)
今なにか通り過ぎたか瓢箪の松に下がれる胴のあたりを
(久野はすみ)
もういまは切り株だけとなりし松 老いたるひざにひだまりを乗せ
057:制服
(黒田康之)
川原には桜草あり制服の少女の歩く匂いのように
(舟橋剛二)
また窓が割られたそうだ制服で隠しきれない闇がはじけて
(有田里絵)
制服に押し込められるはずはない それぞれが持つ十代の色
(野樹かずみ)
散らばってまた集まって散らばって制服たちの平和公園
(みやちせつこ)
制服のネクタイを少しだらしなく結ぶことにも慣れ一学期終わる
058:剣
(村本希理子)
剣山にぷすぷすと刺すチューリップ ニベアミルクを塗りたくる足
(ハナ)
今ここでリダイヤルしてみましょうか?剣のように光る携帯
( こはく)
口数が減っていくのは誰のせい剣先するめのようにふやけて
(篠田 美也)
鯉口を切る、とふことばの暗闇が剣より白き息づかひとなる
(和良珠子)
真剣に歌い給えとひとことも言われぬままに君が代叫ぶ
059:十字
(大西蒼歩)
十字路を右か左かまつすぐか零下の夜のまもなく来る
(やそおとめ)
鉤十字卍どもゑと相似たり歴史がなだれてゆく先の罌粟(けし)
(上澄眠)
見たことのない十字路だ赤い下駄何処かで何かが死んでいる夏
(三宅やよい)
どくだみの十字の花は板塀に輪郭薄き伯母の住む家
(遠野津留太)
照準器の十字(クロス)に敵を捕らえつつ殺戮もまた祈りとともに
060:影
(那賀神 哲)
僕たちの 影が勝手に キスをして 映画のように 仲直りする
(ハナ)
大丈夫だって言い切るあの人の影だけがまだ下を見ている
(橘 みちよ)
炎天の路上にかつてしたやうな影踏まるると死ぬとふ遊び
(如月初香 )
灯のしたにうみおとされた仔猫もう影持ちひとりの命はじめる
(村上きわみ)
ねむれない夜のゆびさき組みあえばふたり影絵の狼と鳩
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