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ゼームス坂




 ゼームス坂の槐は葉を落とし始めていた。 
 妹がこの坂の途中にあるアパートで暮らし 
ていたのは、三十年くらい前のことだ。木造
の古びた建物で日当りが悪かった。当時、妹
は職場の男性と長く付き合っていた。   
「結婚が決まらないうちに家を出るなんて」 
 蒲田でひとり暮らしになった母はこぼした。
わたしは結婚して、大宮の建売住宅に住んで 
いた。                  
「結婚したいなら、お袋に頼んでくれなんて 
言うのよ」                
 ある日、妹はわたしに訴えた。彼は旧華族
出の母親とふたり暮らしだった。ほどなく妹
はアパートを出て、蒲田の家に戻ることにし
た。わたしは夫の車で、引越しの手伝いに行
った。     
 ゼームス坂の槐は薄黄色い花を咲かせてい
た。槐の名前はそのとき、妹から教えられた
ものだ。
 脳梗塞で母が亡くなるまで、妹は独身だっ
た。数年して、妹から結婚することにした、
という電話があった。        
「彼は再婚でね。母親付きなの」      
「今さら、そんな難しい人と結婚しなくても」
「大丈夫よ。わたし負けないから」     
 電話から妹の笑い声が響いた。      
 五年後、妹は交通事故で急死した。     
「どうして、ああいう人と結婚したのかしら」 
 通夜の席で、従姉妹のひとりが囁いた。わ 
たしは義弟の細身で撫で肩の後ろ姿を見た。 
「最初の人と似ている気がするのよ。妹には 
言えなかったけど」            
                     
 大井町へ行く用があって、その帰りにゼー 
ムス坂を歩いてみた。妹の住んでいたアパー 
トは、見つけることが出来なかった。    

                    
                     

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