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鞍馬寺




「奥の院まで行きたいね。牛若丸の背比べ石
というのがあるそうだし」
「そこまで行ったら、集合時間に遅れるわよ」
「だから、ツアー旅行は嫌なんだよ」
 夫はぶつぶつ言いながら、
「じゃあ、ケーブルでなく歩いて降りよう。
途中に義経がいた東光坊跡があるし」
 鞍馬寺の本堂前で説明を聞いた頃から、雨
が降りだした。夫は傘も差さず、黄色いレイ
ンコートを羽織って、階段を降り始めた。
 わたしもしかたなく、夫の後を追う。添乗
員が九十九折と言っていた、石段が続いてい
る。雨に濡れてかなり滑りやすくなっていた。
 霧が出てきたらしく、先を行く夫の姿が見
えなくなった。わたしたちの他に歩いて下る
人はいないようだ。
「平家物語に、鞍馬で稚児していたという、
一節がありましたね」
「荒くれ僧兵の相手をするのも、辛い修行で
しょうね」
 登りのケーブルカーで、夫がツアーの仲間
と話をしていたのを、思い出す。その時、登
ってきた人と、ぶつかりそうになった。かな
りの早足で、黄色いものがちらっと見えたき
りだった。
 時計を見る。だいぶ下ったつもりだが、そ
れほど時間は経っていない。引き返して、ケ
ーブルで降りたほうが、と思いながら、足は
無意識に進んでゆく。ようやく朱塗りの門が
見えてきた。
 山椒の佃煮などを売っている、土産物店の
前を過ぎ、観光バスの駐車場まで来た。バス
ガイドと運転士が話をしていた。
「早かったんですね。お連れの方は?」
 わたしは振り返った。どうしたことか、ケ
ーブルの駅の方から、夫が歩いてきた。

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