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お題べつ好きな歌(017;陸)

(川内青泉)
舟で行く陸の孤島の大島は原電道路がつきて潤う
(有田里絵)
生命が陸に上がったその夜も星は変わらず輝いていた
(野良ゆうき)
陸を行く動物なれば我もまた踏むこともある蹴ることもある
(遥悠(天晴娘々) )
子宮へと大陸棚の片隅を孕まされた日 林檎飴、透ける
(ジテンふみお)
憶測で足の踏み場のない浜にカメはのっそり上陸をする
( 青山みのり )
魚(うお)にあらず鳥にもあらず陸上に生れし獣として子は走る
(瀧村小奈生)
陸橋の上で会いましょう理不尽な風がいつでも吹いているから
( ヨシノタマキ)
誰しもが軟着陸する夕べなり 光る風ならまう吹いちまった

お題べつ好きな歌(016;たそがれ)

(花詠み人 )
空襲の 証言聞いて たそがれに まぎれて歩く 「繰り返すまい」
(さゆら )
叱られた子と鉄棒が錆び色となりてはがれてゆくよたそがれ
(かすいまこと )
たそがれることなど我に来ぬものと 信じていたのは昨年のこと
(りり )
一日の終わり近くのたそがれ時またひとつの小さな死を
(飛鳥川いるか)
水ぐすり喉(のみど)に甘くからまりぬ春のたそがれ濁音に似て
(新田瑛 )
たそがれはみんなうごきがゆっくりになっていのちをたしかめにゆく
(相沢銕誠 )
ヴラド家はたそがれ時に朝食を テーブルの上 並ぶ 幼子
(笹田かなえ)
晩夏から初秋へ移りゆくさまにおずおずと行くたそがれの底

鞍馬寺




「奥の院まで行きたいね。牛若丸の背比べ石
というのがあるそうだし」
「そこまで行ったら、集合時間に遅れるわよ」
「だから、ツアー旅行は嫌なんだよ」
 夫はぶつぶつ言いながら、
「じゃあ、ケーブルでなく歩いて降りよう。
途中に義経がいた東光坊跡があるし」
 鞍馬寺の本堂前で説明を聞いた頃から、雨
が降りだした。夫は傘も差さず、黄色いレイ
ンコートを羽織って、階段を降り始めた。
 わたしもしかたなく、夫の後を追う。添乗
員が九十九折と言っていた、石段が続いてい
る。雨に濡れてかなり滑りやすくなっていた。
 霧が出てきたらしく、先を行く夫の姿が見
えなくなった。わたしたちの他に歩いて下る
人はいないようだ。
「平家物語に、鞍馬で稚児していたという、
一節がありましたね」
「荒くれ僧兵の相手をするのも、辛い修行で
しょうね」
 登りのケーブルカーで、夫がツアーの仲間
と話をしていたのを、思い出す。その時、登
ってきた人と、ぶつかりそうになった。かな
りの早足で、黄色いものがちらっと見えたき
りだった。
 時計を見る。だいぶ下ったつもりだが、そ
れほど時間は経っていない。引き返して、ケ
ーブルで降りたほうが、と思いながら、足は
無意識に進んでゆく。ようやく朱塗りの門が
見えてきた。
 山椒の佃煮などを売っている、土産物店の
前を過ぎ、観光バスの駐車場まで来た。バス
ガイドと運転士が話をしていた。
「早かったんですね。お連れの方は?」
 わたしは振り返った。どうしたことか、ケ
ーブルの駅の方から、夫が歩いてきた。

お題べつ好きな歌(015:友)

(矢嶋博士 )
こゝろ萎えるままなる日々を 思ふよりははるかに多くの 人々のわれを見つめゐ 泣きさうになる日のありき

父も母も子も毎日を生き生きとくらせるやうにと 友の生(あ)れやまず 
(おさと)
友がみなわれよりエラクナッチャッタ産着洗って干してるあいだに
(友 )みやちせつこ
メル友という関係のあやしさは絵文字がぺこぺこお辞儀している
(望月暢孝)
春の樹にあたたかな声を聞くごとし喪いし友の声と思えば
(暮夜宴)
友の輪に飛び込みたくて躊躇して溶け込めなくてダマダマになり
(紅月みゆき )
拝啓で始まる手紙を書き出せず友の名前はゆるく滲んだ
(水須ゆき子)
友引の通夜に集いし嫗(おうな)らの黒きエプロンみな新しき
(内田 誠 )
空白を埋めようとして友達の話しばかりを早口でした

お題べつ好きな歌(014:主義)

(春畑 茜)
あかねさす昼の机上の『滴滴集』主義一語ありやなしやとめくる
(尾崎弘子)
主義ならば国を支へ得るのだらうか怖がるひとが中心に居る
(宮野友和 )
君の淹れたお茶の温かさ世の中の主義や主張はどうでもいいのだ
(内田かおり)
平和主義を語りし君の手は冷えて迷彩色の手袋を出す
( 麻生智矩)
排他主義的団欒のうす甘い茶にも茶柱遠慮なく立つ
(五十嵐正人)
言の葉を生む心根の主義支え立つ足元は密かに揺れる
(花月 香)
ぼんやりと寝床で聞いた主義主張時折大きくいびきをかく君
(涼 )
主義主張通しラムネのビー玉をコトンと落とすコトンと鳴らす

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