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お題べつ好きな歌(008:鞄)

(斉藤真伸)
わが父の旅行鞄の黒光り盛岡はまだ雪なのだろう
(鈴木貴彰)
そういえば父の鞄は重かった ラジオ体操終えた朝のバス停
(浜田道子)
無言にて帰りし夫の黒き鞄冷えびえとして両手に重し
(島田 久輔)
気づかずにずっと回ってるベーゴマはズック鞄の土俵のうえに
(里坂季夜 )
ぺたんこにつぶした学生鞄にだけしまえるものがたくさんあった
(海神いさな。)
嘘つきのマニュアル詰めた鞄です 重くて怖くて笑うだけです
(内田誠)
右肩を傾けたまま歩く背の影が収まる形の鞄
(コメット)
いくつもの不幸な予言取り揃え黒い鞄の保険屋が来る

お題べつ好きな歌(007:発見)

( 宮まり )
足の指が父とそっくり 発見って最近そんな事ぐらいかな
(ケビン・スタイン)
新しい職場に向かう改札で 発見前のコロンブスの僕
( 華音)
ほんとうは誰も愛してないんだと雑踏の中に発見する春
( 正岡豊)
のっそりと這うカタツムリ このぼくに発見されたくない傷がある
(やまもとまき)
半世紀連れ添ってみてあなたとは合わないことを発見しました
(篠田 美也)
子は走るその輝ける発見がただに彼だけのものとなるまで
(大辻隆弘)
ゆふやみの橋上に立ちまなしたをせせらぐ闇を発見したり
( かとうそのみ)
生活に発見があったなんてもうずっと昔のことみたいです

お題べつ好きな歌(006:時)

(謎野髭男)
時として鏡に映るわが貌にひとりつぶやくオマエハダレダ
(さゆら)
腕時計はずせば腕の温みごとすべり落ちたり今日を逃れて
(梶原さい子 )
煮崩るる金時豆のむらさきの楕円 あしたは抱かれにゆく
(本田瑞穂)
言いたかったことはおそらく時間差でやってくるからお茶にしましょう
(荻原裕幸)
時間との捩れの位置にぎんいろの軸がありそれをたどる一日
(森川有)
時刻表、かばん、座席の上すべて。ひかりに漂白されていた 夏
( 佐藤理江)
戦闘と政治のことはさておいて時代のなかで家族は食事
(郁迪 )
静けさが時の流れを止めている長い廊下にいるのはふたり

お題べつ好きな歌(005サラダ)

(春畑 茜)
その午後の小池光のくちびるに春のサラダは触れたであろう
(みやちせつこ)
水菜サラダほどの歯ごたえで生きている今日春物に袖を通して
(中村悦子)
辞めるべくして辞めるのだ 6年に積もる言の葉ざりざりサラダ
( こはく)
舌先に染みいる苦みサラダ菜は佐藤みつゑと書かれたものを
(星川郁乃)
きみに足りないものすべて盛りあげてできあがるのは苦めのサラダ
( 野良ゆうき)
テーブルの上のサラダはいいですね ちょうどいい距離たしかな居場所
( 伊波虎英 )
しやきしやきとサラダすなはち北原白秋(はくしう)のさびしみを食む四月昼なか
(西王燦 )
さらさらと黄沙降る日は思ふべし萵苣のサラダのごとき恋など

お題べつ好きな歌(004:淡)

(黒田康之)
今日からは青い背びれの淡水魚行き場のなさをさらして生きる
(足立尚彦)
こんなにも淡く悲しく逞しく中年男は不眠症なり
(前野真佐子)
淡雪羹舌にしゆはしゆは溶かしつつ雛の宵の雨を聞きゐる
(村本希理子)
友情は淡くしづかに歯を立てていちごみるくを壊す放課後
(yuki)
水彩の淡い記憶は春の中 つくしたんぽぽなのはなれんげ
(牧野芝草)
あの日から六十年も経ったから(舵はおもかじ)淡々とゆく
(青山みのり)
戦争で母を失うお話を間違えず読む淡々と読む
(佐藤羽美)
睡眠はキリンの斑の濃淡のようにかなしい おやすみなさい


お題べつ好きな歌(003:つぼみ)

(武田ますみ)
少しだけ暖かいような気がします。夜の菜の花のつぼみのあたり
(丹羽まゆみ)
風吹けば風のかたちに傾いて空を見ている菜花のつぼみ
(天藤結香里)
ゆっくりとつぼみの気持ちになってみて生まれる前の青さの中で
(今泉洋子)
つぼみたる辛夷のやうな少女子(をとめご)の背丈ばかりがすんすんのびる
(川内青泉)
菜の花に時季(とき)を譲りて冬薔薇かたきつぼみのままに移ろふ
(吉野楓子)
しっかりと掴んで生まれるややの手のつぼみはやがて花咲く準備
(田丸まひる)
乳白のつぼみを間引く 誰にでも愛されているなんて思うな
(森川菜月)
また失業しそうな春だ菜の花のつぼみばかりのお浸しみどり

お題べつ好きな歌(002:色)

(土岐友浩)
地球儀の平野に塗りわけられているオリーヴ色は祈りのかたち
(五十嵐きよみ)
他者だけの世界の中へ踏み入れる足の爪から色づいてゆく
(黒月秋哉)
「みずいろ」じゃなくて「すいしょく」あの夏の午後と蜂とを閉じ込めた色
(やそおとめ)
ちちふさのふつくら透ける色をもて雪餅草の雄花序(ゆうくわじよ)は呼ぶ
(三宅やよい)
つま先に空色ふぐりいぬふぐり春潮ひたと満ちてくるよう
(春村蓬)
どのやうな色でも冬の終はりにはかたいつぱうが褪せる手袋
(葛城)
日を追うて色を増したる常陸野の緑を吸うて風に立ちおり
(飛永京)
色づいた木瓜(ぼけ)の曙ほほろほろ 桃ニモマケズ梅ニモマケズ
(枝川由佳)
金色の希釈してない原液の水鉄砲で一騎打ちしよう

お題べつ好きな歌(001:声)

(もりたともこ)
春風にゆらゆらゆらめく桃の花 きみのささやき声がきこえた
(丸井真希)
透明な君の声には手があって置いていっては私を掴む
(夏瀬佐知子)
声として吐き出す言葉の時として晴れがましきこと尾を引くこと
(あきひろ)
晴れ間出て雪解けの音鳥の声 吾は静かに本を読みたり
(五十嵐正人)
サヨナラもアイシテイルを言うときも震えているは同じ声帯
(なかはられいこ)
泣き声をあげないように手から手へ蝉の抜け殻わたってゆくよ
(水須ゆき子)
梅雨冷えの縁側にたまに落ちている亡き曾祖父の光る濁声(だみごえ)
(石川昌治)
西風が鈴懸の実を吹き抜けるそんな声だった もう忘れたけど

判官びいき




「まったく、頼朝ってひどいヤツだよ」
 若宮大路の段葛を歩きながら、英四郎は妻
の喜久子に話かける。
「だいたい、最初の戦さで負けてから、ずっ
と鎌倉にいただけじゃないか」
 また、夫のいつもの愚痴がはじまった、と
思いながら、喜久子は反論する。
「兄弟が仲違いするのは、源氏だけじゃない
でしょ。大奥ってドラマでも、家光は弟を殺
したんでしょ」
「あれとは立場が違うよ。なにしろ義経の功
績はたいしたものだよ」
「義経が訴状を書いた腰越の満福寺。墓地の
分譲とか、水子供養とかの幟がいっぱい立っ
ていて、少しがっかりしたわ」
「きみは長女だから、末っ子の気持ちが判ら
ないんだよ」
 英四郎は足を速めて、三ノ鳥居をくぐり、
八幡宮の境内へ入った。石段の左手に大銀杏
が聳えている。
「結局、源氏は三代で滅びちゃったんでしょ。
北条氏の思う壷ね」
「兄貴も嫁さんの実家に頭が上がらなかった
からな」
 英四郎はつぶやくように言う。喜久子はバ
ッグから、ガイドブックを取り出して、英四
郎に言った。
「ねえ、ここ見て」
 英四郎はそのページを読んだ。
(義経の首が鎌倉に着いたとき、頼朝は間違
いなし、という報告を聞いただけで、その首
を見ようともしなかった)
「頼朝は怖かったのかしら。それとも辛かっ
たのかしら」
「兄貴もなあ、最後の見舞いに行ったとき、
済まなそうな顔をしていたな」

題詠マラソン2005(41~50)

 


041:迷
太陽系第三惑星この星にヒトと生まれて迷いぬるかな
042:官僚
官僚は汚職するものと思い込んでるわれの幼稚さ
043:馬
パソコンに一日向かえばコリコリの肩に塗らんか馬の油を
044:香
香を焚く匂いただよう葉桜の若宮大路そぞろ歩めば
045:パズル
カックロというパズル解きおり暇つぶし?いいえボケないための訓練
046:泥
泥つきの人参なるも無農薬有機栽培につられて買いぬ
047:大和
室生寺より長谷寺めぐるバスツアー大和の緑したたるばかり
048:袖
留袖にお太鼓しめて厳然と姑はあり三十年のちも
049:ワイン
白ワインがぶ飲みしてからその後は覚えていないの言い訳ばかり
050:変
明日もまた変事なきこと信じつつ二合の米を磨いで眠らん

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