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冬ごもり



「準備完了ね」
 和江はソファーに座りこんだ。二十二階の
窓から、晴れわたった冬空が見える。これか
らしばらく、ここで過ごすつもりだ。
 大型の冷蔵庫には、食品がぎっしり詰め
込まれている。洗剤、トイレットペーパーな
どの日用品もじゅうぶん用意した。
 電気や水道の料金、マンションの家賃など
は自動引き落とし。新聞の購読は断った。一
戸建てに住んでいた頃は、自治会の当番とか、
いろいろな近所付き合いがあったが、ここは
管理費を払っているので、その心配は無い。
 運動不足に備えてルームランナーも買った。
電話も留守電にしてある。息子やその嫁たち
から、電話がくることはめったに無い。
「長年の夢がやっとかなうのよ」
 和江はつぶやいた。子育てが終わってやれ
やれと思う間もなく、姑の介護が始まった。
その看取りの最後のほうで、夫が倒れた。
 姑の七回忌と夫の三回忌を済ませた時、和
江は七十代になっていた。息子たちも結婚し
て、それぞれ家庭を持っている。
 和江が手にした自由な時間。旅行、観劇、
習い事、何でも気兼ねなく出来る。その中で
和江が選んだのは、マンションの一室に篭っ
て好きな本を読みふけることだった。

 日当りの良い窓際の椅子に座って、和江は
分厚い本のページを開く。
<いづれの御時にか、女御、更衣、あまたさ
ぶらひ給ひけるなかに……>
 二、三ページも読み進まないうちに、和江
はうとうと、し始めた。
 チャイムが鳴って、インターホンから女性
の声がした。
「独居老人の調査にお伺いした者ですが」

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