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若葉




「ここがむかしの縁切り寺ね」
 幸枝がつぶやく。
「夫婦で来ちゃまずいのかな」
 利雄が笑いながら答える。
 二人は石段を上って、東慶寺の小さな山門
をくぐった。
「高見順や田村俊子のお墓があるのよ」
「高見順か、死んでずいぶん経つなあ」
「結婚した頃だから、もう40年かしら」
 受付で拝観料を払い、パンフレットを貰う。
「高見順のお墓はどこですか」
 幸枝が尋ねる。
「参道の奥です。歩いて行けば判りますから」
 松ケ岡宝蔵という建物を過ぎ、細い参道を
たどる。平日のせいか人は少ない。右側の崖
に岩タバコが群生していた。道が二手に分かれ
ている。
「どっちかしら」
 幸枝は、赤ん坊を抱いて参道を降りてきた
女性に声を掛けた。
「高見順はこの奥です。案内します」
 女性は道を引き返した。左側の小高い場所
に、自然石の墓標があった。その傍に丸い腰
掛のような石の置物がある。
「赤ちゃん連れでたいへんですね」
 幸枝が言うと、
「ええ、ここでお乳を飲ませたり、おむつを
替えたりできました」
 女性はちょっと、口ごもるように、
「怒られかもしれませんが」
「いいじゃないですか」
 利雄は頷いて、
「高見順もたしか『死の淵より』で、命への
賛歌をうたっていましたよ」
 幸枝があやすと、赤ん坊は笑う。墓石の上
でもみじの若葉がゆれていた。

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