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題詠マラソン2005(31~40)




031:盗
大盗賊鼠小僧の墓という合格祈願に石削られて
032:乾電池
乾電池でないからネジを巻いてゆく柱時計は5分進めて
033:魚
姿かたちまこと品よき魚なれどサヨリ開けば腹は真っ黒
034:背中
うつ伏せの背中ならべてポーズするヨガ教室のトドの群たち
035:禁
この先は立ち入り禁止 国宝の仏殿前に白菜干され
036:探偵
完結篇まだかまだかと待ちわびる岩崎正吾『探偵の四季』
037:汗
汗ぬぐう振りして涙ふいている勝利のあなたを称えながらも
038:横浜
再婚し横浜瀬谷区に住むという妹逝きて六年経てば
039:紫
むらさきの匂えるいもといいながら紫芋のクリーム舐める
040:おとうと
末っ子のおとうとゆえの思いいれ父は頼朝いつも貶せり

若葉




「ここがむかしの縁切り寺ね」
 幸枝がつぶやく。
「夫婦で来ちゃまずいのかな」
 利雄が笑いながら答える。
 二人は石段を上って、東慶寺の小さな山門
をくぐった。
「高見順や田村俊子のお墓があるのよ」
「高見順か、死んでずいぶん経つなあ」
「結婚した頃だから、もう40年かしら」
 受付で拝観料を払い、パンフレットを貰う。
「高見順のお墓はどこですか」
 幸枝が尋ねる。
「参道の奥です。歩いて行けば判りますから」
 松ケ岡宝蔵という建物を過ぎ、細い参道を
たどる。平日のせいか人は少ない。右側の崖
に岩タバコが群生していた。道が二手に分かれ
ている。
「どっちかしら」
 幸枝は、赤ん坊を抱いて参道を降りてきた
女性に声を掛けた。
「高見順はこの奥です。案内します」
 女性は道を引き返した。左側の小高い場所
に、自然石の墓標があった。その傍に丸い腰
掛のような石の置物がある。
「赤ちゃん連れでたいへんですね」
 幸枝が言うと、
「ええ、ここでお乳を飲ませたり、おむつを
替えたりできました」
 女性はちょっと、口ごもるように、
「怒られかもしれませんが」
「いいじゃないですか」
 利雄は頷いて、
「高見順もたしか『死の淵より』で、命への
賛歌をうたっていましたよ」
 幸枝があやすと、赤ん坊は笑う。墓石の上
でもみじの若葉がゆれていた。

題詠マラソン2005(21~30)




021: うたた寝
座布団に胎児のように丸まってうたた寝すれば母の声する
022:弓
十三で死んだ佐藤真弓さん三つ編み髪がいまも鮮やか
023;うさぎ
食べるためうさぎを飼っておりましたオオバコ摘んで餌にしました
024:チョコレート
われに科すチョコレート禁止令血糖体重どれもひどくて
025:泳
江戸城の本丸跡に鯉のぼり泳ぐ日なきかコケのむすまで
026:蜘蛛
ベランダの物干し竿に飛ぶ前の蜘蛛の子あまた円居(まどい)している
027:液体
たぷたぷの液体みつる皮ふくろ桜の下にわが身をおけば
028:母
母上は大歩危小歩危の道づたい昨日清流今日は濁流
029:ならずもの
ならずものなど無縁と思い誠実に勤めておりしが何が不満か
030:橋
妹の帰りゆきたる浮橋か夜明けの空にたなびく雲は

ジジのつぶやき




「やはり、下見に行ったほうがいいかしらね」
ババはつぶやく。
「たまには一緒に鎌倉へ行きましょうよ」
ババの探題会の下見に、なんでオレが付き合
わなくちゃいけないのか。
 結局オレはババと北鎌倉の駅に降りたった。
平日だがかなりの人出だ。
「あそこでお昼、食べて行かない?」
 ババが駅前の店を指差す。まだ11時すぎ
たばかりじゃないか、と思ったが、ババの目
的は昼飯より、トイレらしい。ババと出かけ
て、迷惑なのはすぐ、トイレと言い出すこと
だ。それも時間がかかる。
 キシュセットとかいう、グラタンとパイの
あいのこのような物を食わされて、店を出
た。これじゃあ腹の足しにならない。
 円覚寺を拝観して、踏み切りを渡り、東慶
寺に向かう。いわゆる縁切り寺だ。
 石段を上り、小さな山門をくぐる。
「高見順のお墓はどこかしら?ちょっとあの
人に聞いてみるわ」
 ババは赤ん坊を抱いて参道を降りてきた女
性に声を掛けた。
「この奥です。案内します」
 女性は道を引き返した。参道の左側の小高
い場所に自然石の墓標があった。その傍に丸い
腰掛けのような石の置物がある。
「ここに座って、お乳を飲ませていました」
 その女性は言葉を続ける
「高見順の『死の淵より』を読んで、お墓参
りしたくなって来たんです」
 墓石の上でもみじの若葉が揺れていた。
「これから、どこを歩かれるんですか」
 ババが尋ねる。
「この先の浄智寺に行こうと思います」

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