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門限




 タクシーを降りて、腕時計を見る。午前1
時30分。夫から言われた門限をだいぶ過ぎ
ている。
「どう、いいわけしようかしら」
 路地のつきあたりのわが家の外灯がまぶし
く見えた。
 知人の句集の出版記念会が終わったのが、
8時過ぎ、それから喫茶店に寄って、お開き
の予定だった。
 学生や若いサラリーマンで賑わう酒場で盛
り上がり、そこで帰ればよいのに調子に乗っ
て、カラオケボックスにも付き合った。
 音をたてないように門扉を閉め、玄関の鍵
を探す。静かだが夫はまだ起きているのか。
 ダイニングキッチンのドアを開けると、テ
ーブルの上がやけにきらきらしている。
「なにしているの」
「見ればわかるだろう」
 夫はこちらを振り向きもせずに言う。
 卓上いっぱいコップや皿などの、ガラス器
が並べられていた。夫はそのひとつを取りあ
げ電灯にかざした。
「こういうのを磨くのは、鹿皮がいちばんい
いそうだが、そんなものはないだろう」
 夫は独り言のように言う。
「リンネルぐらいは、あるかと思ったが、そ
れも見つからない。これで代用したよ」
 夫は緑と黄色の布地を指さした。
「ちょっと、それ……」
「うん。柔らかくて使いやすいよ。うちの奥
さんだらしないから、かわいそうにこんなに
曇らされて」
 夫はブランデーグラスを撫でる。
「エルメスのスカーフよ」
 値段を言いかけて、夫に内緒で買ったこと
を思い出した。
「文句言ってないで、さっさと風呂に入れよ」

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ババの短説」カテゴリの記事

コメント

これも旧作ですか?
僕は初めて読ませていただきましたが、これいいですね。
「夫」はやっぱり心配で起きていた。
手持ち無沙汰から、普段やりもしないことをやりながら。
遅くなったことについては何も言わず、照れ隠しのように言う、最後のセリフが効いています。

これと逆の立場から書いたのが、HMさんの「コミュニケーション」で、併せて読むと面白いです。

前作の「ツネ子」が1996年で、その翌年の作品です。今回の掲載にあたって、だいぶ手直ししました。「コミュニケーション」はいいですね。うちのジジに読ませたいです。


ココログはスタートより大変読みやすくなりましたね。
ご苦労様でした。もう慣れてベテランの境地でしょう。

作品「門限」は好きな作品です。

この作品はよき夫婦仲が描かれています。
ぼくなら鬼の留守に飲み屋。帰っていなければ
眠りこけていると思う。

スタイルも全体的にぬくもりが感じられてよかったです。
これからもちょくちょく拝見したいですね。

遊びにきていただいてうれしいです。ML以外にも皆様の世界が広がってゆく感じがします。山の作品もたくさん載せてください。楽しみにしています。

この夫の行為、実に淡々としていて、想像してみると恐ろしいですね。
こんな怖いことを、こんなに普通に書いていることも、けっこう怖いです。この突き抜けた怖さが、この短説の魅力なのでしょう。

コメントありがとうございます。日常生活の中の怖さが私の潜在的なテーマですが、やりすぎると単なるホラーになってしまい、難しいです。

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